そして私は途方に暮れる。
2004年5月25日さっきから目の前の彼女のパスタがちっとも減らない。
フォークでパスタをすくっては巻き、すくっては巻き、を繰り返す。
けれどそれが彼女の口元まで運ばれることはない。
パスタが絡まったまま、フォークは静かに皿の上に横たわる。
そうしてしばらくするとやがてまた思い出したようにフォークを手にして。
すくっては巻き、すくっては巻き。
さっきからその行為を何度となく繰り返してる。
行儀の悪い子どもみたいに。
「あのね、昨日ネットでね、占いをやってみたの。
タロット占いだったんだけどね、いい結果が出なくてさ。
いい結果が出るまでクリックしようと思ったの。
何度も何度もカードをクリックし続けたの。
そうやってそれ繰り返してたら、気がつけば朝だった。」
狂ってるでしょ、と彼女は言った。
唇の端を無理に引き上げて。
(・・・・だから、さっきからそれ、笑えてないんだってば。)
ああ。
空はこんなに青いのに。
風はこんなに暖かいのに。
太陽はとっても明るいのに。
(どっかで聞いたような・・・・なんの歌詞だっけ。)
それにしても一向に目の前の彼女のパスタは減らない。
冷めてゆくパスタが余りにもかわいそうで。
とうとう言ってしまった。
「ね、パスタ食べなよ」
うん、と言ったか言わないか。
小さな掠れたような声が聞こえた気がした。
確かめるべく彼女に目をむければその瞳からは大粒の涙。
・・・・やがてフォークを手にして。
パスタをすくっては巻き、すくっては巻き。
そして私は途方に暮れる。
どんな言葉も薄っぺらい気がして。
結局何も言えなかった。
ああ。
空はこんなに青いのに。
風はこんなに暖かいのに。
太陽はとっても明るいのに。
(・・・・どうして。)
目の前の彼女のパスタは減らない。
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