音楽は時に人生のアルバム。
2003年4月24日昔一度だけ母親の涙を見たことがある。
テレビでは懐メロ特集をやっていた。
馴染みのない歌手が古臭い歌を歌っていた。
チャンネルを変えようとして振り返ると。
母が泣いていた。
声を殺して。表情を消して。
頬に光る涙を見なければ泣いているとわからないくらい。
静かに、静かに、泣いていた。
小学生だった私はとても動揺して。
見てはいけないものを見てしまった気がした。
慌ててテレビに顔を向き直し、そのまま動くこともできずに。
その物悲しい歌をぼんやりと聴いていた。
私にとっては古臭くてつまらない曲。
でも母親にとってはそうではなかったのでしょう。
そして今。
ふいに流れてきたのはビリージョエルの「ピアノマン」。
あの人はこの曲が好きだった。
あの頃の私はハードロックが好きだったから。
借りたCDも聴いたのは結局3、4回だったけど。
この曲が好きだったあの人を。
この曲が好きだとあの人が言ったあの場面を。
ビリージョエルの歌声とピアノが鮮やかに思い出させる。
いい曲だ。
今、はじめてそう思った。
そして気がつけば私は。
声もなく泣いていた。
あの頃の母親と同じように。
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